亜急性硬化性全脳炎
Subacute Sclerosing Panencephalitis, SSPE
亜急性硬化性全脳炎(Subacute Sclerosing Panencephalitis, SSPE)とは
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は、麻疹ウイルスが原因となる進行性の神経疾患です。この疾患は、麻疹ウイルスが脳に感染した後、数年から数十年を経て発症します。主に小児や若年成人に見られ、最初は軽度の症状が現れますが、進行するにつれて重度の神経障害を引き起こします。症状としては、精神的な変化や運動機能の低下、けいれんなどが見られます。
特徴的な症状
SSPEの症状は、進行性で段階的に現れます。主な症状は以下の通りです:
- 精神症状: 記憶力の低下や判断力の障害、性格の変化などが現れます。
- けいれん: 進行性のけいれん発作が頻繁に発生します。
- 運動障害: 筋肉の硬直、歩行困難、四肢の不随意運動が見られます。
- 失語症: 言語能力が低下し、コミュニケーションが困難になることがあります。
- 視力障害: 視力の低下や視野欠損が生じることがあります。
原因と病態
SSPEは、麻疹ウイルスの感染後にウイルスが神経細胞に長期間にわたって潜伏し、再活性化して脳に障害を与えることによって発症します。麻疹ウイルスは通常、子供の頃に発症する麻疹の原因となるウイルスですが、免疫系がウイルスを十分に排除できないと、数年後にSSPEが発症します。病態は神経細胞の損傷と炎症反応を伴い、脳の灰白質に変性を引き起こします。
診断方法
SSPEの診断は、臨床症状や検査結果を基に行われます。診断に役立つ検査方法は以下の通りです:
- 脳波検査: SSPE患者では異常な脳波パターン(特徴的な高振幅の波形)が見られます。
- MRI検査: 脳の構造的な変化、特に白質の障害が確認されることがあります。
- 麻疹ウイルス抗体検査: 血液や脳脊髄液中の麻疹ウイルスに対する抗体を検出することが有用です。
治療方法
現在、SSPEに対する特効薬は存在せず、治療は主に症状を緩和することを目的としています。以下の治療法が試みられます:
- 免疫療法: 高用量の免疫グロブリンやインターフェロンが使用されることがあります。
- 抗ウイルス療法: アシクロビルなどの抗ウイルス薬が使用されることがありますが、効果は限定的です。
- 対症療法: けいれんや運動障害に対して、薬物による管理が行われます。
希少性と予後
SSPEは非常に希少な疾患で、麻疹ウイルスの予防接種が普及する前に多く見られましたが、現在では発症頻度は著しく低下しています。発症後の予後は非常に悪く、進行が速い場合が多いため、早期の診断と治療が重要です。しかし、治療が遅れると重度の障害を残すことが多く、最終的には死に至ることもあります。