食行動症および摂食症
Feeding and Eating Disorders
食行動症および摂食症 (Feeding and Eating Disorders)とは
食行動症および摂食症(Feeding and Eating Disorders)は、食事に関する異常な行動や心理的問題を特徴とする一群の疾患です。この疾患群には、過食や拒食などの食事に対する行動異常や、それに伴う健康への影響が含まれます。
これらの障害は、体重や体型への強いこだわり、自己評価の低下、不安やストレスへの対処方法として食行動を制御する傾向が背景にあります。早期の介入や治療が重要であり、適切な支援を受けることで回復が期待できます。
①神経性食欲不振症・思春期やせ症は、完ぺき主義・強迫的傾向が強く、とにかく徹底的に拒食を続け体重が30kgを下回ることも多々あります。極度のやせの状態にもかかわらず、活動的でさらに痩せようと努力を続けます。自らのボディーイメージのゆがみがあると考えられています。極端な痩せ(飢餓)により、徐脈、不整脈、消化器症状、代謝異常、骨異常、ホルモン系の障害など全身の身体症状を生じ、特に若い女性は無月経になることが多く、さらにひどい場合には生命の危険も脅かされます。
②神経性過食症・神経性大食症は、発作的に繰り返される過剰な過食とその渇望、そして体重をコントロールするために自ら誘発する嘔吐、緩下剤の乱用、薬物使用などで抵抗しようとします。そして、精神的に抑うつ、気分の変動、衝動性などを伴ってきます。
これらの原因として、スリムをもてはやす社会・文化的要因、絶えずさらされている競争や対人関係等の社会的ストレス(心理的要因)、親子(特に母子)関係での問題(家庭環境要因)そして元来のパーソナリティ等が複雑に絡み合って発病すると考えられています。
主な種類と特徴
- 神経性やせ症(Anorexia Nervosa)
- 主な症状:
- 極端な食事制限や過度な運動による著しい体重減少。
- 自分の体型や体重への強い恐怖感(太ることへの恐れ)。
- 自分の体型に対するゆがんだ認識(「もっと痩せないといけない」という思い込み)。
- 影響:
- 栄養不足により、無月経、低血圧、心臓の問題、骨粗しょう症などが生じます。
- 精神的には、抑うつ、不安、社会的孤立が見られます。
- 主な症状:
- 神経性過食症(Bulimia Nervosa)
- 主な症状:
- 短時間に大量の食物を摂取する「過食エピソード」を繰り返す。
- 過食後に体重増加を防ぐための行動(自己誘発性嘔吐、下剤の乱用、過度な運動)。
- 自分の体型や体重が自己評価に過度に影響を与える。
- 影響:
- 嘔吐による歯のエナメル質の損傷や電解質異常が生じる。
- 胃腸障害や脱水症状、抑うつ症状が併発することもあります。
- 主な症状:
- むちゃ食い症(Binge-Eating Disorder)
- 主な症状:
- 短期間に大量の食物を摂取し、その後に罪悪感や自己嫌悪を感じる。
- 過食行動は頻繁に起こりますが、嘔吐や下剤乱用などの代償行動が伴いません。
- 影響:
- 肥満やそれに伴う健康問題(糖尿病、高血圧、心疾患)につながる可能性があります。
- 抑うつや不安、社会的孤立感を感じることが多いです。
- 主な症状:
- 回避・制限的食物摂取症(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder:ARFID)
- 主な症状:
- 食事の摂取量が非常に少なく、健康に悪影響を及ぼす。
- 食べ物の味、匂い、見た目、食感への強い嫌悪感。
- 健康への懸念から食事を避ける場合も含まれる。
- 影響:
- 栄養不足や発育不良、成長障害、社会的孤立を引き起こすことがあります。
- 主な症状:
有病率と発症要因
- 有病率:
- 神経性やせ症の生涯有病率は約0.3〜0.9%、神経性過食症は約1.0〜2.0%とされています。
- むちゃ食い症は一般人口の約3.5%に見られるとされ、摂食障害の中で最も多い疾患です。
- 発症年齢:
- 神経性やせ症は10代中盤から後半、神経性過食症は10代後半から20代前半に発症することが多いです。
- むちゃ食い症は幅広い年齢層で見られます。
- 原因:
- 生物学的要因(遺伝、脳内神経伝達物質の異常)。
- 心理的要因(低い自己評価、不安感、完璧主義傾向)。
- 社会的要因(痩せた体型への社会的理想やプレッシャー)。
治療方法
- 心理療法
- 認知行動療法(CBT):摂食行動や体型へのこだわりを見直し、健康的な思考と行動を促します。
- 家族療法:特に思春期の患者に有効で、家族全体で病気への理解と支援を深めます。
- 対人関係療法(IPT):人間関係のストレスを整理し、摂食行動への影響を減らします。
- 栄養カウンセリング
- バランスの取れた食事を再構築するため、専門家の指導を受けます。
- 薬物療法
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):抑うつや不安症状の軽減を目的とします。
日常生活での工夫とサポート
- サポート体制の確立:家族や友人の支えが治療の成功に大きく寄与します。
- ストレス管理:趣味や運動、リラクゼーション法を取り入れ、ストレスを軽減します。
- 早期の受診:摂食行動の異常に気づいたら早めに専門医に相談することが重要です。
まとめ
食行動症および摂食症は、体重や食事への強いこだわりが日常生活に深刻な影響を与える疾患群ですが、適切な治療によって回復が期待できます。
「体重や食事に過剰に気を使いすぎている」「食事の異常が日常生活に影響している」と感じたら、早めに専門医に相談しましょう。
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監修医師
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