強迫症および関連症
Obsessive-Compulsive and Related Disorders
強迫症 (Obsessive-Compulsive Disorders)とは
強迫症(Obsessive-Compulsive Disorder:OCD) は、頭から離れない考え(強迫観念)や、やめたくてもやめられない行動(強迫行為)によって、不安や苦痛が引き起こされる精神疾患です。患者の多くは、その考えや行動が「無意味である」「不合理である」とわかっていますが、抑えることが難しく、日常生活に支障をきたします。
強迫症は、単なる「こだわり」や「几帳面」といった性格の問題ではなく、脳機能の異常が関係する病気です。 思春期から20歳代にかけて好発し、男女差はほとんどありませんが、男性は女性よりも若年で発症する傾向 があります。
強迫症の主な症状
強迫症には大きく分けて 強迫観念 と 強迫行為 の2つの症状が見られます。
1. 強迫観念
- 頭から離れない不合理な考えやイメージが繰り返し浮かび、不安を引き起こします。
- 例:
- 「手が汚れているのではないか」という強い不安。
- 「鍵を閉め忘れたのではないか」「ガスの元栓を閉め忘れたかもしれない」という考え。
- 不吉な出来事が起こるのではないかという恐怖。
2. 強迫行為
- 不安を解消しようとして、特定の行動や儀式的な行動を繰り返します。行為が完了しないと、不安がさらに強まることがあります。
- 例:
- 過剰な手洗いや消毒。
- 鍵やガス栓、電化製品を何度も確認する。
- 数字や順序に異常にこだわる(例:特定の数字で数え直す)。
強迫症および関連症の種類
- 強迫症(OCD)
- 強迫観念と強迫行為が特徴です。日常生活や社会活動に支障をきたすほど症状が強くなります。
- OCDの約半数はうつ病を併発 することが報告されており、うつ症状が症状の悪化や長期化に繋がることもあります。
- 身体醜形症(Body Dysmorphic Disorder)
- 自分の体の一部が「醜い」「異常だ」と感じ、鏡を何度も見たり、隠そうとする行動を繰り返します。
- ため込み症(Hoarding Disorder)
- 不要な物を捨てられず、大量の物をため込んでしまう症状です。生活空間が埋め尽くされ、日常生活に支障をきたします。
- 抜毛症(Trichotillomania)
- 自分の髪の毛を抜いてしまう症状です。抜いたことによる不安や苦痛が増大することがあります。
- 皮膚むしり症(Excoriation Disorder)
- 自分の皮膚を繰り返しむしる行動が特徴です。傷や出血が見られることもあります。
有病率と発症の要因
- 有病率:強迫症の有病率はおおよそ 1〜3% であり、男女差はほとんどありません。
- 発症年齢:強迫症は 思春期から20歳代にかけて好発 し、男性は女性よりも早い年齢で発症する傾向があります。
- 原因:
- 生物学的要因:脳内のセロトニン異常や脳の「前頭葉」「基底核」と呼ばれる部分の機能障害が関係していると考えられています。
- 心理的要因:過去のトラウマや過度なストレスが引き金になることがあります。
- 遺伝的要因:家族歴がある場合、発症リスクが高まります。
強迫症の治療方法
- 薬物療法
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) が主に使用されます。強迫観念や強迫行為を軽減します。
- 認知行動療法(CBT)
- 曝露反応妨害法(ERP):不安を引き起こす状況に少しずつ慣れさせ、強迫行為を我慢する訓練を行います。
- 思考の歪みや不合理な信念を修正し、不安に対処するスキルを身につけます。
- 家族療法
- 家族が疾患について理解し、サポートすることで治療効果が高まります。
強迫症と日常生活
強迫症は本人にとって非常につらい病気ですが、周囲の理解やサポートが回復を支えます。
- サポートの重要性:強迫症の症状を責めず、治療への協力が不可欠です。
- 日常生活の工夫:ストレスを軽減し、リラクゼーションや適度な運動を取り入れることが大切です。
- 自己管理:治療計画に沿って薬を服用し、療法を続けることが症状の改善に繋がります。
まとめ
強迫症および関連症は、過剰な不安や特定の考え・行動が繰り返され、日常生活に支障をきたす病気ですが、適切な治療によって症状は改善します。
「何度も確認してしまう」「考えが止まらない」と感じたら、無理をせず早めに専門医に相談しましょう。早期治療が、回復への第一歩です。
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