神経発達症

Neurodevelopmental Disorders

神経発達症 (Neurodevelopmental Disorders)とは

神経発達症(Neurodevelopmental Disorders)は、発達期(子ども時代)に症状が現れる一群の疾患です。多くの場合、小学校入学前から症状が見られ、個人的・社会的・学業または職業機能に影響を与える発達の欠陥によって特徴づけられます。
この「欠陥」の範囲は非常に広く、学習や実行機能の制御といった限定的な問題から、社会性や知能の全般的な障害にまで及びます。

神経発達症の主な種類

  1. 自閉スペクトラム症(ASD)
    • 社会的コミュニケーションや人間関係が苦手。
    • 限定的・反復的な行動や特定の物事への強いこだわりが見られます。
  2. 注意欠如多動症(ADHD)
    • 集中力が続かない(不注意)。
    • 落ち着きがなく、衝動的な行動が目立ちます。
  3. 限局性学習症(SLD)
    • 読み書きや計算が極端に苦手で、学習に困難を感じます。
  4. 知的能力障害(知的発達症)
    • 論理的思考、問題解決、学習など全般的な知的機能に欠陥が見られます。
    • 適応機能の障害があり、日常生活での支援が必要です。
  5. コミュニケーション症群
    • 言語症、語音症、社会的(語用論的)コミュニケーション症、小児期発症流暢症(吃音)など、言葉の発達や会話の流れに障害が見られます。
  6. 運動症
    • 運動がぎこちない、不器用さが目立つ障害です。

併発する疾患

神経発達症は、他の疾患と併発することが多いです。例えば:

  • 自閉スペクトラム症の人は、知的能力障害を併発しやすい。
  • ADHDの子どもは、限局性学習症を併存することがよくあります。

知的能力障害(知的発達症)について

知的能力障害は、論理的思考、問題解決、学習などの知的機能に欠陥があり、以下のような影響が見られます:

  • 学校や職場での適応が困難。
  • 家庭や地域社会での自立や責任の達成が難しい。

全般的発達遅延は、知的機能の評価が難しい幼い子どもに対して診断されることがあり、標準的な検査が実施できない場合に用いられます。

コミュニケーション症群

コミュニケーション症には以下の種類があります:

  • 言語症:言語の発達や使用に欠陥がある。
  • 語音症:正しい発音ができない。
  • 社会的(語用論的)コミュニケーション症:社会的文脈に応じた会話が苦手。
  • 小児期発症流暢症(吃音):言葉が途切れたり、音の延長がある。

これらの症状は幼少期に発症し、生涯にわたって影響を与えることがあります。

自閉スペクトラム症(ASD)の特徴

自閉スペクトラム症は以下の2つが特徴です:

  1. 社会的コミュニケーションの欠陥
    • 人間関係の構築や非言語的なコミュニケーションが難しい。
  2. 反復的な行動や興味の限定
    • 特定の行動や物事にこだわり、変化を嫌う傾向があります。

症状は発達とともに変化することがありますが、診断には過去の情報も考慮されます。

神経発達症との向き合い方

神経発達症は「努力不足」や「しつけの問題」が原因ではありません。脳の発達の特性として理解し、その人に合ったサポートが重要です。

  • 早期発見と支援:適切な療育やサポートを早期から開始することが大切です。
  • 周囲の理解:学校や職場、家庭などでの理解と協力が不可欠です。
  • 強みを活かす:特性を理解し、その人の得意分野や強みに目を向けましょう。

まとめ

神経発達症は、特別なものではなく、多くの人が直面する可能性がある症状です。適切なサポートがあれば、その人らしく社会で活躍できる可能性が広がります。
「違い」を尊重し、一人ひとりの個性や能力を理解する社会づくりが求められています。「少し理解しづらいな」と思ったときこそ、その人の可能性や魅力に目を向けてみてください。

Supervising

監修医師

精神科医 樺沢 紫苑

Medi Face監修医師 YouTubeで精神医学を解説

札幌医科大学医学部卒。2004年より米国シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学し、うつ病、自殺についての研究に従事。「精神医学の知識、情報の普及によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube・メルマガなど累計100万人に情報発信をしている。著書「学びを結果に変えるアウトプット大全」をはじめに51冊、累計発行部数260万部。

President Doctor

代表医師

近澤 徹

Medi Face代表医師、精神科医、産業医

北海道大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院で研修を経て、名古屋市立大学病院の客員研究員として臨床と研究に従事。医師であり経営者として、医療とテクノロジーを融合させた次世代ヘルスケアを推進中。在学中に創業したMedi Face社では、オンライン診療システム「Mente」を開発し、全国の患者への診療サービスを提供。また、100社以上の企業にAIドクターを導入し、自身も産業医として社員のメンタルケアを日々支援している。とくに、「Z世代」のメンタルケアや人的資本をテーマにしたセミナーや企業講演を多数行い、多くの企業や若者から高い支持を得ている。さらに、東京を中心に、北海道から九州、海外では韓国にまでクリニックを展開し、医療サービスの提供エリアをオンライン・オフライン共に拡大中である。