睡眠-覚醒症

睡眠-覚醒症 (Sleep-Wake Disorders)とは

睡眠-覚醒症（Sleep-Wake Disorders） は、睡眠の質や量、タイミングに異常が生じる疾患群です。これらの疾患は、日中の覚醒状態や活動能力に影響を及ぼし、生活の質を著しく低下させることがあります。睡眠は心身の健康を維持する上で重要な要素であり、睡眠障害はそのバランスを崩す原因となります。

主な種類と特徴

1. 不眠症（Insomnia Disorder）
   • 夜間に十分な睡眠が取れず、日中の生活に支障をきたす状態。
   • 主な症状：
     • 入眠困難：眠るまでに長い時間がかかる。
     • 中途覚醒：夜中に何度も目が覚める。
     • 早朝覚醒：朝早く目が覚め、再び眠れなくなる。
   • 原因：ストレス、心理的要因、生活習慣の乱れ、薬物の影響など。
2. 過眠症（Hypersomnolence Disorder）
   • 過剰な眠気を感じ、日中に居眠りをしてしまう状態。
   • 主な症状：
     • 十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、過剰な眠気が持続する。
     • 長時間の昼寝をしても、疲労感が改善しない。
   • 原因：身体的疾患、神経疾患、薬物の影響が関連することが多い。
3. ナルコレプシー（Narcolepsy）
   • 突如として眠りに落ちる睡眠発作が特徴。
   • 主な症状：
     • 睡眠発作：突然の強い眠気。
     • 情動脱力発作（カタプレキシー）：笑うなどの感情表出で筋力が低下する。
     • 入眠時幻覚や睡眠麻痺（いわゆる金縛り）。
4. 概日リズム睡眠-覚醒障害（Circadian Rhythm Sleep-Wake Disorders）
   • 睡眠と覚醒のタイミングがズレ、社会的・職業的な活動に影響を与える状態。
   • 主な症状：
     • 遅寝遅起きタイプ（夜型）や早寝早起きタイプ（朝型）のリズム異常。
     • 時差ぼけやシフトワークによる不調。
5. 睡眠時無呼吸症候群（Obstructive Sleep Apnea Hypopnea Syndrome：OSAHS）
   • 睡眠中に呼吸が一時的に停止する障害。
   • 主な症状：
     • いびき、呼吸停止、日中の極度の眠気。
     • 高血圧や心血管疾患のリスク増加。
6. 睡眠関連運動障害（Sleep-Related Movement Disorders）
   • 睡眠中の異常な運動が特徴。
   • 主な疾患：
     • レストレスレッグス症候群：足を動かしたい衝動が強まり、入眠が妨げられる。
     • 歯ぎしり（睡眠関連ブラキシズム）。

発症の要因

• 生物学的要因：脳内の神経伝達物質の異常や遺伝的要因。
• 心理的要因：ストレスや不安、抑うつ状態。
• 環境的要因：不規則な生活習慣、睡眠環境の問題（騒音、光など）。
• 身体的要因：慢性疾患や肥満が関係する場合もあります。

治療方法

1. 睡眠衛生の改善
   • 就寝時間と起床時間を一定に保つ。
   • 寝る前のカフェインやアルコールの摂取を控える。
   • 心地よい睡眠環境を整える（暗く静かな部屋、快適な温度）。
2. 薬物療法
   • 不眠症には睡眠薬、過眠症やナルコレプシーには覚醒促進薬を使用。
3. 行動療法
   • 認知行動療法（CBT）：不眠に対する思考の歪みを修正。
   • リラクゼーション法やマインドフルネス。
4. 機器療法
   • 睡眠時無呼吸症候群にはCPAP（経鼻的持続陽圧呼吸療法）を使用。

日常生活での工夫

• 睡眠日誌をつけ、睡眠パターンを把握する。
• 寝る前にリラクゼーションを行い、心を落ち着かせる。
• 寝室は「寝るための場所」とし、読書やテレビは他の部屋で行う。

まとめ

睡眠-覚醒症は、睡眠の問題が日常生活や健康に深刻な影響を与える疾患群ですが、適切な治療とサポートによって改善が可能です。
「なかなか眠れない」「日中に極度の眠気を感じる」などの症状が続く場合は、早めに専門医に相談しましょう。良質な睡眠が、心身の健康と生活の質を向上させる鍵となります。