身体症および関連症

Somatic Symptom and Related Disorders

身体症(Somatic Symptom Disorders)とは

身体症および関連症(Somatic Symptom and Related Disorders)は、体の不調や症状に過度に集中し、それに伴う不安や苦痛が日常生活に大きな支障を与える一群の精神疾患です。
この疾患群では、実際に身体的な症状がある場合もあれば、医学的に説明できない場合もありますが、共通しているのは症状に対する患者の心理的反応の強さです。体の不調に対する過剰な不安や執着が見られます。

身体症状のため内科などの一般科を受診し、精神症状も認めるために精神科を受診し診断されるもの、精神症状のため精神科を受診し、のちに身体疾患が背景にあることがわかり診断されるものがあります。躁状態で双極症(躁うつ病)が疑われたが甲状腺機能亢進症であった例、妄想や興奮、衝動行為などで統合失調症が疑われたが膠原病であった例などがあります。  器質性精神障害とは、脳の何らかの疾患により精神症状を認めるもので、前項の認知症も含まれますが、認知症を主とする疾患以外のものについて解説します。原因として、頭部外傷による脳損傷、脳出血、脳梗塞などの脳血管障害、脳炎、脳腫瘍、脳変性疾患などがあります。症状として、意識障害、意識障害に伴う幻覚や興奮などの症状、記憶障害、認知症状、感情の不安定、人格変化、幻覚や妄想症状、躁状態やうつ状態などがあります。なお、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)なども脳の病気ですが、これらは脳の機能性障害に分類されます。

主な種類と特徴

身体症および関連症は、以下のような疾患に分類されます。

  1. 身体症症(Somatic Symptom Disorder)
    • 実際に体の症状があり、その症状に対する考えや不安が過剰になる。
    • 主な特徴:
      • 症状について繰り返し考えたり、不安に駆られる。
      • 症状の原因が分からなくても、日常生活や社会生活に深刻な影響が現れる。
      • 医療機関を頻繁に訪れるが、納得する診断が得られず不満を抱くことがある。
  2. 病気不安症(Illness Anxiety Disorder)
    • 実際には症状がない、または軽微であるにもかかわらず、自分が重い病気だと確信してしまう。
    • 主な特徴:
      • 病気に関する考えが頭から離れない。
      • 医療機関で異常がないと診断されても安心できない。
      • 健康状態を頻繁に確認したり、逆に病院を避ける行動が見られる。
  3. 変換症(Conversion Disorder)
    • 神経学的な症状(例:運動麻痺、けいれん、失明など)が現れるが、医学的な原因が特定できない。
    • 主な特徴:
      • ストレスや心理的な要因が症状の引き金になることが多い。
      • 症状は無意識に現れ、患者自身が症状を演じているわけではない。
  4. 作為症(Factitious Disorder)
    • 病気であるふりをしたり、故意に症状を作り出す疾患。
    • 主な特徴:
      • 他者の注目や同情を得るために症状を訴える。
      • 症状の原因が意図的であるが、外的報酬(お金や仕事など)を得るためではない。

症状と影響

身体症および関連症の症状は非常に多様で、以下のような特徴があります。

  • 身体症状:痛み、倦怠感、吐き気、しびれ、呼吸困難など、具体的な症状が現れることが多い。
  • 過剰な心配:症状の原因や病気の重さについて過度に不安を抱く。
  • 生活への影響:症状への過度な集中により、仕事や学業、家庭生活に支障が出る。

有病率と発症の要因

  • 有病率:
    • 身体症症の有病率は人口の約5〜7%とされており、女性に多く見られます。
    • 病気不安症は約1〜10%の割合で報告されています。
  • 発症要因:
    • 過去のトラウマやストレス。
    • 家族歴:近親者に同様の症状を持つ人がいる場合、発症リスクが高まる。
    • 心理的特性:心配性や感情を表現するのが苦手な性格傾向。

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治療方法

身体症および関連症の治療は、心理療法を中心に行われます。必要に応じて薬物療法も併用されます。

  1. 心理療法
    • 認知行動療法(CBT):症状への過剰な注意や不安を軽減することを目指します。
    • マインドフルネス療法:不安や心配にとらわれず、現在の瞬間に集中する方法を学びます。
  2. 薬物療法
    • 抗不安薬や抗うつ薬が使用されることがありますが、身体症状そのものを治療する薬はありません。
    • 症状に応じて個別に処方されます。
  3. 環境サポート
    • 家族や友人の理解:患者の苦しみを否定せず、サポートすることが重要です。
    • 医療機関との連携:安心できる治療計画を立てるために、かかりつけ医との信頼関係を築きます。

身体症と日常生活

身体症および関連症は、本人にとって非常につらい病気ですが、適切な治療を受けることで改善が期待できます。

  • 休養とストレス管理:十分な休息とストレスを軽減する工夫が大切です。
  • 生活習慣の改善:バランスの取れた食事や適度な運動が症状の改善に役立ちます。
  • 治療の継続:心理療法や薬物療法を続けることで、回復の道が開かれます。

まとめ

身体症および関連症は、体の不調や症状に過剰にとらわれ、不安や苦痛を感じる疾患群です。適切な治療とサポートを受けることで、症状を軽減し、日常生活を取り戻すことが可能です。
「体の症状が続いてつらい」「病気の心配が頭から離れない」と感じたら、無理をせず専門医に相談してください。一人ひとりに合った治療が、あなたの生活をより良いものにする手助けとなります。

Supervising

監修医師

精神科医 樺沢 紫苑

Medi Face監修医師 YouTubeで精神医学を解説

札幌医科大学医学部卒。2004年より米国シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学し、うつ病、自殺についての研究に従事。「精神医学の知識、情報の普及によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube・メルマガなど累計100万人に情報発信をしている。著書「学びを結果に変えるアウトプット大全」をはじめに51冊、累計発行部数260万部。

President Doctor

代表医師

近澤 徹

Medi Face代表医師、精神科医、産業医

北海道大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院で研修を経て、名古屋市立大学病院の客員研究員として臨床と研究に従事。医師であり経営者として、医療とテクノロジーを融合させた次世代ヘルスケアを推進中。在学中に創業したMedi Face社では、オンライン診療システム「Mente」を開発し、全国の患者への診療サービスを提供。また、50社以上の企業にAIドクターを導入し、自身も産業医として社員のメンタルケアを日々支援している。とくに、「Z世代」のメンタルケアや人的資本をテーマにしたセミナーや企業講演を多数行い、多くの企業や若者から高い支持を得ている。さらに、東京を中心に、北海道から九州、海外では韓国にまでクリニックを展開し、医療サービスの提供エリアをオンライン・オフライン共に拡大中である。